2025年11月10日 第16回 政府(厚生労働省・こども家庭庁)と 障害者障害者自立支援法違憲訴訟団との定期協議における要請書の授受
2025年11月10日 第16回定期協議の動画
要 請 書
(第16回定期協議において回答を求める事項等)
厚生労働大臣 殿
内閣府特命担当大臣(こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画) 殿
2025年11月10日
障害者自立支援法違憲訴訟団
本要請書は社会保障審議会障害者部会に資料として必ずご提供ください。
目次
第一 基本合意15周年フォーラムご協力への謝辞.......................... 2
第二 基本合意・骨格提言の尊重....................................... 2
第三 国連総括所見の尊重について..................................... 3
第四 2024年7月3日「旧優生保護法違憲訴訟」最高裁大法廷判決に伴う障害者政策の点検と見直し 5
第五 報酬支払い方式(日払い制度を骨格提言の採用する方式に)と職員不足問題について 6
第六 障害児福祉における利用者負担の撤廃を............................ 10
第七 重度訪問介護を子どもも対象としてください......................... 11
第八 介護保険優先原則について...................................... 14
第九 就労時のヘルパー(同行援護含む)利用について..................... 16
第一〇 重度訪問介護等の支給決定の在り方について....................... 17
第一一 入通院時ヘルパー利用について................................. 18
第一二 支給決定における「理由付記」の徹底を.......................... 19
第一三 食事提供加算と送迎加算について............................... 21
第一四 自立支援医療の利用者負担の低所得者無償化....................... 21
第一五 「恵」問題の示唆する日本の障害福祉行政の課題.................... 22
第一 基本合意15周年フォーラムご協力への謝辞
本年6月2日「基本合意15周年記念フォーラム」(以下、「15周年フォーラム」)に厚生労働省・こども家庭庁に後援頂き、各政務官のご挨拶、特別報告、パネルディスカッションへのご登壇頂き、お蔭様で成功裡に開催できました。
私たちの活動の到達点と課題を改めて確認するとともに今後の活動に向けて決意を新たに致しました。
改めて篤く御礼申し上げます。
今後とも日本の障害福祉法制の進展に向けて国と協力しながら進んで参りますので、宜しくお願いします。
なお、藤岡の基調報告で、2010年の基本合意の効果により障害福祉の利用者負担額が無償なった人数(生活保護受給者等の障害者自立支援法施行前から無償人数除く)について、当時の厚労省の回答により
「障害福祉サービス(自立支援給付)41万人
補装具 16万件」
と報告しました。
伊藤洋平障害福祉課長が、パネルディスカッションの際に、現在ではもっと多い人数 が無償化されていますと話されました。
では、直近のデータでは、それぞれ何人になっていますでしょうか。
ご回答下さい。
第二 基本合意・骨格提言の尊重
1 基本合意文書・骨格提言
2010年1月7日付基本合意文書及び2011年8月30日付障がい者制度改革推進会議総合福祉部会骨格提言を尊重して障害者福祉法制を推進する方針を国に求めます。
とりわけ、15周年フォーラムのテーマとした「自己責任と家族依存からの脱却」は、基本合意と骨格提言の肝というべき現在及び将来における日本の障害福祉法制のあるべき基本姿勢です。
また第15回定期協議において国は
「障害者への社会的障壁を取り除くのは社会の責務である」
ことを改めて確認しました。
現在の障害者総合支援法は「障害に起因する日常生活・社会生活上の支障、不利益、社会的障壁の解消を障害者本人の自己責任と考えず、障害者へのサポートを家族に依存せずに国・自治体等の公的責任とする」という理念に立脚した法律であると理解して宜しいですね。
2 社会的障壁の除去は障害福祉施策の重要な目的であると答弁下さい
「障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策推進本部」会議に「基本合意文書」及び「骨格提言」を基礎文書として配布・周知して下さい。
昨年の定期協議にて求めましたが
「優生思想及び障害者に対する偏見差別の根絶に向けた取組の点検、取組の強化を行う場ということでございます。…障害保健福祉施策そのものを議論する場ではない…ので、基本合意文書、骨格提言の配付を行う予定はない」
として拒絶されました。
この点の国の大いなる「認識不足」について、失望し、抗議します。
「障害福祉施策は、障害者に対する偏見差別の根絶に向けた取り組みとは関係ない」と国が認識していることがわかります。
いみじくも昨年の定期協議にて国は、「障害者への社会的障壁を取り除くのは社会の責務である」という社会モデルの重要性を答弁されました。
障害福祉施策も社会モデルを基礎として実施される施策です。
障害者に対する偏見差別の根絶は障害福祉施策の重要な目的に他なりません。
社会的障壁の除去は障害福祉施策の重要な目的であるということで宜しいですね?
重要な点ですのでご回答下さい。
第三 国連総括所見の尊重について
1 2022年9月、国連の総括所見
2022年9月9日、国連障害者権利委員会からの総括所見(勧告)について、昨年第15回及び一昨年の第14回定期協議で国は
| 総括所見の趣旨も踏まえ、障害者の希望に応じた地域生活の実現、一層の権利擁護の確保に向け、関係省庁とも連携しつつ取り組んでまいりたいと考えております。
と答弁されました。
2023年11月6日の第13回定期協議で矢田貝企画課長が
| この総括所見につきましては、御承知のとおり法的な拘束力があるというものではございませんけれども
などと答弁して、訴訟団の反感・反発を受けていたことと比べれば、改善された答弁とも言えます。
しかし、例えば、障害の社会モデルの採用、職場内介護禁止を止めるべきなどの総括所見の個別事項に関して国は頑なに無視しています。
単なるリップサービスではなく、真摯に「総括所見を反映する施策を実施する」旨お約束下さい。
2 総括所見の総論部分の実行について
訴訟団は例年
「国は速やかに国連の勧告に従って、障害者総合支援法の障害者の定義として障害者基本法の採用する社会モデルを採用するべきです。」
と求めています。
この点、昨年も一昨年も国の答弁は
●障害者総合支援法は、社会モデルの考え方を反映している
●障害者基本法は理念を定めるもので、障害者総合支援法は具体的な給付法であり、
対象者を客観的に明らかにする必要があるので医学的で客観的な評価基準を排除できない
というものでした。
昨年も強く批判しましたが、前段の「支援法の基本理念規定を設けたから社会モデルを採用している」は、全くの話のすり替えです。
支援法の理念規定に社会モデルを謳いながら、具体的な施策対象者を社会モデルにしないならば、法の矛盾・法の欠陥です。
また、給付法だから社会モデルを採用できないと主張していますが、要するに「給付を制限したいから社会モデルは受け容れない」としか受け取れません。
実際、社会モデルを法が採用したことにより、手帳を保持しない障害者・厚労省が難病法や障害者総合支援法で指定しない難病者でも、障害者差別解消法・障害者虐待法等では救済されているという好事例があります。
しかし、そのような障害者も、なぜか障害福祉制度は利用できないという大きな社会的障壁にぶち該たります。
これは「障害福祉法制度自身による障害者差別措置」ではないですか?
そのような批判にどう国は答えますか?
3 障害基礎年金の給付水準を引き上げをして下さい。
総括所見59パラは権利条約28条について
「市民の平均所得に比べて、障害年金が著しく低額であること。」
として、国連は日本に懸念を表明してます。
基本合意と一体文書である平成22年1月7日付要望書1項(5)「障害者の所得保障」
では「障害者が地域社会で当たり前に生きていけるように,障害基礎年金の増額や手当の給付など所得保障制度を確立してください。」と明記されています。
今般、各地で原告の声を聴いたところ「昨今の物価高の影響等もあり、生活が苦しく、いまの障害基礎年金だけではとても生活できない」との声が多く寄せられています。
生活が苦しい!というのは、原告を含む全国の障害者の共通した声です。
現行の障害基礎年金の給付水準を老齢年金の給付基礎額に倣うやり方も見直し、障害者の生活を守るための給付水準の引き上げを求めます。
第四 2024年7月3日「旧優生保護法違憲訴訟」最高裁大法廷判決に伴う障害者政策の点検と見直し
1 障害者が家庭生活を送る権利の保障を
障害者グループホーム(GH)に居住する方が結婚して子どもを産んで育てようとすると当該GHからの退去を強いられる問題を昨年指摘しました。
令和6年6月5日付けの厚労省・こども家庭庁連名の「障害者の希望を踏まえた結婚、出産、子育て…」と題する文書にしても、結婚や出産を理由としてすぐに追い出すのは忍びないので少し様子をみましょうという程度の内容に過ぎず、基本的に障害者総合支援法のGHで結婚・出産・子育てはできない制度であるという指摘には何ら回答がありません。
各部署が連携して、わかりやすいパンフや動画を制作する等は全く、改善策と評価できません。
昨年と同様の要望になります。
グループホームに入居している障害者の家族支援に対して適正な報酬が給付されることを含め、障害者総合支援法・児童福祉法上、結婚、出産、子育て等の家族支援の新たな法制度を整備するよう、早急に検討会等を設置して議論をし、法整備及び予算の確保を実施して下さい。
2 精神障害関連政策について優生思想の視点からの検証と改革を
昨年の要請書で指摘したことは、かつての日本での優生政策の方法論の一つとして、精神科病院で長期間隔離することが「自然断種」として子どもを産ませないための有効な方法論であると、旧優生保護法の前身国民優生法の審議で議論されていたこと、旧優生保護法施行直後にも、精神病床の増床と精神障害者の遺伝防止のための優生手術の実施が一体のものとして精神医療の関係団体から国へ陳情されていたこと等の歴史があり、精神病床の増床は優生施策と切り離せない旨の指摘とその点の検証の要望です。
昨年の答弁で引用された「精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会」や「障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策推進本部」の設置する検討会等でこの点の検証をご検討ください。
第五
第五 報酬支払い方式(日払い制度を骨格提言の採用する方式に)と職員不足問題について
1 報酬支払の方式の点の第15回定期協議での答弁は
| 報酬の日払い制度について、障害福祉サービスは、利用者が日ごとに複数のサービスを組み合わせて利用することができるよう、日々の利用実績に応じた日額払い方式により報酬が支払われる仕組みとしており、これは医療保険制度や介護保険制度も同様です。 なお、日払い方式の導入に当たっては、利用者の急な欠席等に対応した際の評価として報酬で加算を設けております。 利用者がニーズに合ったサービスを選択できるようにするためには、基本的に日払い方式を維持すべきと考えておりますが、引き続き、報酬の在り方については、医療や介護などの他制度も参考としつつ、経営実態やサービスの利用の実態等を踏まえながら検討してまいります。
というものでした。
しかし、国は骨格提言を尊重するとしています。そして、骨格提言は
| 施設系支援に掛かる報酬については、 「利用者個別給付報酬」(利用者への個別支援に関する費用)と 「事業運営報酬」(人件費・固定経費・一般管理費) に大別する。 前者を原則日払いとし、後者を原則月払いとする。
としています。
人件費・固定経費等の一般管理費は、月額払いを原則とせよとしています。その上で
| 前者(利用者個別支援費)を2割、後者(事業運営報酬)を8割程度とする。
としています。 国のいう「日払い方式維持」は骨格提言と相違しています。
国の指摘する「障害のある方がその状況やニーズに応じていろいろなサービスを組み合わせて使うことができる」は在宅サービスでは日払い方式として実現しており、他方、通所または入所施設サービスにおいて機械的に運用することの弊害を骨格提言は指摘しているものであり、骨格提言の方式への転換は無理だと頑なに拒否する姿勢を変え、制度の見直しを柔軟に考えてください。
2 生活介護、放課後等デイサービス等への時間区分報酬を即座に撤回を求めます!
令和6年報酬改定で「サービス提供時間別に細やかに設定する。」としました。これは、日払いどころか、時間払い方式とするもので、尊重しているはずの骨格提言の道筋に「逆行している」と言わざるを得ません。
生活介護の時間払い方式が導入された結果、事業所が報酬額を安定的に確保するため、利用者に対し利用時間の変更を求め、その結果、利用者が自宅でのヘルパー調整を強いられて日常生活に支障が生じたり、生活介護の利用を断念したりする事例が現に生じています。
効率的な報酬支払いを追求する余り、利用者の生活スタイルを変容させ、事業所の都合に合わせることを強いているもので、このような事態は本末転倒といえます。
また厚労省は、時間区分報酬の導入にあたって、個別支援計画で契約した「標準利用時間」での給付費請求を「配慮」として実施しています。しかしこの「配慮」は、すべての生活介護、放課後等デイサービスが適用できているわけではありません。障害の特性等のため利用時間が日によって大きく異なる利用者が多い事業所は、「実利用時間」での時間区分報酬の請求を強いられています。さらに地域によっては、この「配慮」の実施を認めていない自治体もあります。しかも、この「配慮」は、今後も継続的に保障される制度運用なのかは、きわめて不透明です。
まずは、通所型もしくは障害者支援施設の生活介護と、放課後等デイサービスの時間区分報酬制度は、事業の実態(とくに障害特性や利用実態)や、利用者の生活を理解しない改悪として、即座に撤回を求めます。
また、財務省が提案している就労継続支援B型への「時間区分報酬」の導入に断固反対します。
報酬改定後の実態を即刻明らかにすると共に、骨格提言を尊重したあるべき形に回帰することを強く求めます。
3 障害福祉の職員不足問題の早急の解決と小規模事業所の基本報酬・加算の取得の実態を明らかにしてください
(1)障害福祉職員の賃金水準を全産業の平均水準に引き上げるため報酬制度の改正
15周年フォーラムにおいても、元原告・保佐人から切実な課題として問題提起されたのが、障害福祉分野における「職員不足」問題です。元原告たちは、「ヘルパーが確保できないため、トイレや食事、外出をガマンしないといけない」や、「グループホームでも夜勤職員を確保できないため、通所施設の管理者や職員が応援に入り、疲弊し、日中の支援や介助体制も滞っている」などの切実な声がありました。人の支えがあってこそ、障害者が「他の者と平等に暮らす」ことができるのに、それが阻まれ、地域によっては「生命の危険」にまで及んでいる実態があります。
人材不足問題は、全産業や社会全体の問題となっていますが、とくに介護・障害福祉等の分野での職員不足は、きわめて深刻です。
たとえば、令和7年3月の厚労省の「一般職業紹介状況」における有効求人倍率は1.29倍でした(有効求人数に対する有効求職者数。例えば、ある地域で24人の求人募集に対して19人の求職者しかいないということ)。
それに対して全社協・中央福祉人材センターの「職業紹介報告」によると、令和7年3月における「障害者福祉」の有効求人倍率は6.01倍(求人数6,301人に対して有効求職者数1,049人)という実態でした。きわめて厳しい職員確保の実態が浮き彫りになっています。
また独立行政法人福祉医療機構は、障害福祉の人材確保の現状と困難要因に関する実態調査を令和6年3月に発表し、「人員確保が難しい要因」として、「他産業より低い賃金水準」が68.0%(257件)ともっとも多くなっていました。
このように、障害福祉分野における職員不足の現状はきわめて厳しく、その要因は、他の産業に比べて低い賃金水準にあることは明らかなのです。
厚労省は令和7年3月の障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(以下、報酬改定検討チーム)の資料3において、令和5年9月と令和6年9月を比較して、「障害福祉職員の平均賃金は上昇した」と積極評価しています。
しかしこのデータは、あくまで福祉事業種別ごとの平均です。処遇改善の格差問題で詳述しますが、事業所の利用者規模によって取得できる加算に大きな格差があり、その結果、支給できる給与にも格差が生じています。こうしたデータを公表する際には、前項で示した利用者定員規模でクロスして平均を集計しなければ、リアルな実態は浮き彫りになりません。なぜならば障害者自立支援法以降に地域に増勢した就労継続支援事業や生活介護などの通所施設の圧倒的多くは利用者定員20人規模以下が多いことと、グループホームでは2024年度報酬改定によって入居者4人、5人に支援者1人の報酬規準が廃止されてしまったからです。
厚労省は、前項で示した「障害福祉職員の平均賃金は上昇した」とする事業種別の基本報酬と加算の取得状況データについて次のように区分けしたデータを公表して下さい。
① 就労継続支援事業と生活介護は、「利用者定員21人未満」と「以上」
② グループホームは「利用者定員6人未満」と「以上」
に分けて公表し、基本報酬と加算の取得格差の実態を明かにしてください。
(2)処遇改善加算制度の抜本的な見直しと基本報酬への統合
令和5年6月に、それまで処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算の3制度に分けられていた処遇改善加算は一本化されました。その結果、令和7年3月の報酬改定検討チームの資料3では、「旧制度より取得率が向上した」という評価がなされています。しかし資料3が示したデータには、処遇改善加算制度の欠陥が示されていました。
まず事業種別でみると、施設入所支援の取得率は97.5%です。つまり利用者・職員数の多い規模の事業所ほど加算を取得しやすいのです。また、加算率の高い「加算(Ⅰ)」でも、施設入所支援が79.7%ともっとも多くなっています。
ところがそれに対して、加算率の高い「加算(Ⅰ)」を取得している事業所の率は、居宅介護が31.1%、重度訪問介護が26.3%、生活介護が57.4%、就労継続支援A型が42.5%、就労継続支援B型が50.8%、グループホームが40.9%というように半数、もしくは半数以下にとどまっています。
これには3つの要因があります。
第1は通所施設やグループホームにおける利用者規模です。通所事業所では、利用者21人未満とそれ以上で、グループホームでは入居者6人未満とそれ以上で、取得率に格差が生じています。
第2には訪問系事業への影響です。訪問系事業は、「特定事業所加算」を取得しないと「加算Ⅰ」を取得できません。「特定事業所加算」とは、すべての登録ヘルパーの健康診断の実施、定められた研修の実施、支援会議の実施と書面による情報提供を実施している事業所か否かなどで、取得未取得が決まります。その結果、加算率の高い「加算(Ⅰ)」を取得している居宅介護は31.1%で、重度訪問介護が26.3%という取得状況になっています。
そして第3には、地域の最低賃金水準が影響します。訪問系・通所施設・グループホームなどすべての事業において、「加算(Ⅱ)」以上の取得には、「年収440万円以上の職員が一人以上いること」という要件が課せられます。これによって地域格差が生じてしまうのです。例えば、最低賃金の低い地域で20人定員の就労継続支援B型を設置した場合、常勤職員は1.5~2人くらいで、その他は非常勤職員となるため、そうした小さな事業所に「年収440万円以上の職員」を雇うことはできないのです。厚労省は、この「年収440万円要件」を緩和するための処置を実施していると説明しますが、その措置の判断も自治体になってしまうため、取得が困難な事業所は多くあります。
厚労省は、制度自らがつくりだしている「賃金格差」を是正するためにも、処遇改善加算の詳細な実態(とくに前項と同様の利用者規模と、最低賃金1000円未満と以上の地域差)を公表してください。
また令和5年10月に東京都が提言しているように、処遇改善加算は基本報酬に組み込み恒久化してください。
第六 障害児福祉における利用者負担の撤廃を
1 収入認定方法の変更を実現して下さい
基本合意三条は
| ③ 収入認定は、配偶者を含む家族の収入を除外し、障害児者本人だけで認定すること。
としています。
訴訟団は「利用者負担は本人だけの収入で算定する仕組みに転換」するよう一貫して要請してきました。
これは基本合意それ自体の実現であり、2010年1月から約16年間にわたりその実現を求めている基本合意の履行の根幹に関わる事項です。
15周年フォーラムでも議論されましたとおりです。
どうか基本合意の本質に関わるこの項目の実現を本気で実現して下さい。
2 国の補装具の所得制限撤廃を訴訟団として評価しています
令和6年4月から障害児の補装具費支給制度の所得制限が撤廃され、すべての障害児が補装具費の支給対象となったことは、基本合意の精神に合致する望ましい政策実行として訴訟団として高く評価しています!
むしろ、このような政策実施を国はもっと周知・広報するべきと考えます。
訴訟団としても国と足並みを揃えて日本の障害者福祉政策の前進に取り組むきっかけの一つになるとも考えます。
ぜひ、さらに政策を一歩進めて、上記1を実施し、障害児福祉における利用者負担の事実上の撤廃政策に舵を切るべきです。
第七 重度訪問介護を子どもも対象としてください
1 重度訪問介護の対象年齢の引き下げを
昨年第15回定期協議でのこの点に関する国の答弁は
| 障害児については、重度訪問介護のような長時間にわたり居宅において支援を行うというよりも、日中において多くの時間を過ごす学校に加え、放課後等デイサービス等の利用や、居宅介護、短期入所等のサービスを組み合わせることで必要な支援を提供していくものと考えております。
でした。
これでは全く問題の深刻さを国が理解していないと言わざるを得ず、話の摩り替えです。
「学校」に通学している時の介護をここでは問題にしておらず(学校内での重度訪問介護の利用の論点もありますが、ここではそれ以前のレベルの議論です)、学校に行っている時間帯以外のことをここでは問題にしているのです。学校があるから良いという論法はあり得ません。
平日に1日を考えても、学校にいるの低学年でいえば、8時半~14時くらいが主であり、24時間で考えれば、0時~8時30分と14時~24時の8.5+10=18時間半くらいは学校以外の時間帯です。
土日休日も多いですし、冬休み・夏休み等もあり、小学校に通学する日は200日程度であり、年間165日程度は、学校ではなく自宅で過ごします。
放課後デイサービスを利用しても多くは17時頃には帰宅します。
重度障害児が放課後デイを利用し帰宅したあとの時間帯の介護を問題としています。
居宅介護にしても、一般の障害者に対しても、認められる支給量は少なく、1日、1~2時間程度が多くの場合です。
ましてや、両親が同居していることを理由として、それらの時間数さえ支給が認められないのが日本全国の自治体の実態であり、国の答弁は現実に全く対応していない、現実を知らない無責任な答弁と言わざるを得ません。
ショートステイ(短期入所)を使うとしても月に1~2回程度であり、本題の解決に結びつく話ではありません。
重症心身障害児・重度障害児・医療的ケア児等のいる家庭では親が長時間介護で疲弊し、きょうだいもケアラーとされている深刻な現状を国は直視すべきです。
令和5年6月13日付「こども未来戦略方針」では、『全てのこども・子育て世帯を切れ目なく支援すること』」が必要とされ、「障害のあるこどもや医療的ケアが必要なこどもを育てる家庭、ひとり親家庭などに対してよりきめ細かい対応を行うこと」とされていることと
上記の答弁は矛盾するとこども家庭庁、厚労省を批判せざるを得ません。
重度訪問介護の対象年齢を引き下げることを今一度、国は真剣に検討して下さい。
2 児童福祉法の改正及び運用改善を
第15回定期協議において、児童福祉法63の2,63条の3の15歳以上の障害児について、重度訪問介護等の障害者総合支援法の障害福祉サービスを児童相談所長の判断により認める例外規定を引用し、「15歳以上」とする現行法の引き下げを早急に検討して下さい。と求めました。
この点の国の答弁は
| 義務教育課程を修了した障害児が、職業的・社会的な自立を目指すため障害者を対象としたサービスを必要とする場合があることから設けているものです。 したがって、当該規定の適用については、被虐待児童のみを念頭に置いているわけではない一方で、重度訪問介護など障害者を対象としたサービスを、15歳以上の重症心身障害児や医療的ケア児等に拡大するために行われるものではなく、児童相談所長が、児童の発達の状態、生活環境等の状況を総合的に把握した上で、児童の健全な発達を妨げないかという専門的な判断に基づき行うこととなります。 なお、御指摘の周知につきましては、現行の運用上、この児童相談所長の判断(通知)は、児童相談所が行う相談援助活動を踏まえて適切に行っていただいているものと認識しております。 また、先ほど申し上げたような制度の趣旨を踏まえますと、15歳以上としている現行法の規定の見直しは困難
でした。
質問事項1
まず、基本的に障害者(18歳以上)が対象とされている障害者施策に関し、15歳~17歳の障害児が利用している現行の運用状況や、障害児が重度訪問介護等を使っている具体例を明らかにして下さい。
この点、ご回答下さい。
質問事項2
また、規定を設けた際の主な趣旨が「義務教育を修了した者のサービスの利用」であるという説明の意味がよく理解できません。
中学を卒業した重度障害の未成年者が学校に行かないでヘルパーを利用しながら在宅生活を送るイメージなのですか?
職業的・社会的自立を目指すためのサービス利用とは具体的には何を指しているのですか?
理解できるように詳しく教えて下さい。
要望
また仮に規定の制定の際の趣旨がそうだからと言って、そのような事案に限定される必然性はありません。
実際、弁護団の事件の経験上も、15歳~17歳の障害児が、特別支援学校高等部に通学しながら、自宅や外出で重度訪問介護等の障害福祉サービスを児童相談所長判断に基づき利用している事案も知っています。
法の規定制定当時、重度障害児の家の中の世話は母親がするのが当然という考えがあったのかもしれませんが、男女問わず、こどもに障害があろうと、親が職業を持つ自由は保障されるべきであり、まさに、「児童の発達の状態、生活環境等の状況を総合的に把握した上で」同条項は適切に運用されるべきであり、多くの重症心身障害児や医療的ケア児等が重度訪問介護を利用できるように積極的に運用する方針としてください。
訴訟団としてまずは上記1の重度訪問介護の対象年齢引き下げを求めますが、仮に一気に実現することが困難であるならば、現行法の適切な運用による救済と児童福祉法の修正による重度訪問介護の対象引き下げというアイデアを提案する次第です。
第八 介護保険優先原則について
1 訴訟団の基本方針
訴訟団は、基本合意三条④号「介護保険優先原則(障害者自立支援法第7条)を廃止し、障害の特性を配慮した選択制等の導入をはかること。」を国に改めて強く求めます。
2 令和5年6月30日付事務連絡の評価について
第15回定期協議にて「令和5年6月30日付事務連絡」[1]次の部分は訴訟団の要請を反映したものと評価しました。
| 障害福祉サービスの利用を認める要件として、一定の要介護度や障害支援区分以上であること、特定の障害があることなどの画一的な基準(例えば、要介護5以上でかつ障害支援区分4以上、上肢・下肢の機能の全廃、一月に利用する介護保険サービスの単位数に占める訪問介護の単位数が一定以上等)のみに基づき判断することは適切ではなく、障害福祉サービスを利用する障害者について、介護保険サービスへの移行を検討する際には、個々の障害者の障害特性を考慮し、必要な支援が受けられるかどうかという観点についても検討した上で、支給決定を行うこと。
| 居宅介護や重度訪問介護を利用する障害者について、個々の障害者の障害特性を考慮し、介護保険の訪問介護の支給対象とならない支援内容や時間(例えば、家事援助として認められる範囲の違いや、日常生活に生じる様々な介護の事態に対応するための見守りなど)が必要と認められる場合に、介護保険の訪問介護の支給とは別に居宅介護又は重度訪問介護の利用を認める。
3 事務連絡を実効性あるものとすること
① 介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領)に書き込むこと
第14回の要請について、定期協議で国は「検討する」とし、実際、令和6年4月版の「事務処理要領」に入れ込んだことは国が訴訟団からの要請を誠実に受け止め履行していることの一例であり、定期協議の意義を再確認できることとしてその対応を評価しました。
② 自治体が国の障害福祉に関する通知・事務連絡に違反している場合の通報窓口の設置を
しかし、当該事務連絡の趣旨に反する支給決定基準を設けている市町村が多くあることを指摘し、国からの個別指導等の実効的な具体的な措置を求めました。
この点の国の答弁は
| 国といたしましては、引き続き市町村において適切な運営がなされるよう周知に努めてまいります。
だけでした。これは「残念」な答弁です。せっかくの事務連絡が機能せず、違法な対応が現場で横行する現状を黙認するならば、自治体の違法行政を国が放置・追認しているとも言えます。自治体が国の障害福祉に関する通知・事務連絡に違反していることに関する通報窓口の設置を検討下さい。
4 国庫負担基準における介護保険対象者の減額措置を廃止すべきです。
このことは、第14回・第15回定期協議でも求めています。
この点の国の答弁は次のものです。
| 居宅介護の国庫負担基準については、障害福祉サービスの居宅介護と介護保険サービスの訪問介護の利用時間を比較すると、障害福祉サービスの障害支援区分5、6の利用者については、介護保険サービスの利用者(要介護4、5)よりも支援時間数が長くなっており、この支援時間の差分については、障害福祉サービスにおいて支援が必要と考えられることから、新たに居宅介護の介護保険対象者の障害支援区分5、6について、国庫負担基準単位を創設したところです。
介護保険対象障害者の居宅介護の時間数と介護保険の時間数に差があるので差額を埋める必要があるとの説明です。
これはとりも直さず、国が介護保険対象障害者について一律に介護保険を利用することを強要することを前提とする措置であり、そもそも、平成19年課長通知において、一律・機械的に介護保険を優先する扱いを戒めている国の方針と矛盾しています。
差額補償など誤魔化しです。介護保険利用を一律に決めることができないという国の基本的考えからすれば、国庫負担基準により介護保険対象障害者に対する減額措置の一切を廃止するべきです。
第九 就労時のヘルパー(同行援護含む)利用について
1 前回定期協議の答弁
令和2年度から開始した「雇用と福祉の連携」方式により、職場内ヘルパー利用が可能となった事例は 令和6年度で
| 61自治体226名が利用
とのことでした。
令和6年1月1日現在、日本の市町村数は1718です。
61/1718 は 3.5% に過ぎません。
4年間で61ですので、単純計算で全市町村が利用するまで113年間かかります。
到底「機能している」制度とは到底言えません。
全国の働きたい障害者のほとんどが使えない制度である以上、国の説明には説得力は皆無です。
2 2022年9月9日権利委員会から日本への勧告(総括所見)
権利委員会から日本への総括所見のうち、
本論点に関する事項として次の指摘があります。
| 8. 委員会は、締約国に勧告する。 (e)移動支援、身体的支援、コミュニケーション支援など、地域社会で障害者に必要なサービスや支援を提供するための地域や自治体の格差をなくすために、必要な立法措置や予算措置を講じること。 パーソナルモビリティ(第20条) 第43パラ(a) 国連の懸念「法的な制限が、地域生活支援サービスを、通勤や通学、又はより長い期間を目的に利用することを許容しないこと。 」 第44パラ(a) 国連の要請「全ての地域における障害者の移動が制限されないことを確保するために、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の下での制限を排除すること。」 d) 職場でより集中的な支援を必要とする人への個人的支援の利用を制限する法的規定を撤廃する。
改めて次の事項を強く求めます。
障害者総合支援法を名指しして、通勤・通学・長期間外出に対する障害福祉サービス給付の制限の撤廃を要請していることを国は深刻にかつ真摯にうけとめるべきです。
平成18年厚労省告示第523号「通勤・営業活動等の経済活動に係る外出時、通年かつ長期にわたる外出時及び社会通念上適当でない外出時における移動中の介護には支給しない」による制限を撤廃せよとの国連要請です
地域生活支援事業という自治体任せではなく、国の責任事業として重度訪問介護・居宅介護・同行援護を職場・通勤・通学・学校内等で利用出来る運用として下さい。
第一〇 重度訪問介護等の支給決定の在り方について
令和7年3月の障害保健福祉関係主管課長会議資料によれば、「重度訪問介護等の適正な支給決定について」(平成19年2月16日付事務連絡)を踏まえて、「重度訪問介護は、介護保険の訪問介護と違い、見守り等を含む比較的長時間にわたる支援を想定しているものであることから、利用者一人ひとりの障害の状態、その他の心身の状況及び利用意向等を踏まえて適切な運用及び支給量の設定を行う」、「深夜帯に利用者が就寝している時間帯の体位交換、排泄介助、寝具のかけ直しや見守りなどの支援にかかる時間についても、医療的ケアの有無だけでなく、利用者一人ひとりの事情を踏まえて適切な支給決定を行うこと」などとされており、かかる考え方は妥当なものと評価できます!
もっとも、上記主管課長会議以降も、「夜間に体位変換や排泄等の具体的な介助が必要な事態に備えて見守り等の支援を行っている時間帯については支給量の積算を行うが、昼間に同様の支援を行っている時間帯については積算しない」、「医療的ケアが必要な障害者に対して見守り等の支援を行っている場合は支給量を積算するが、それ以外の障害者については積算しない」といった不適切な運用をしている市町村が散見されます
一例として、群馬県前橋市の要綱(前橋市介護給付費等支給決定基準に関する要綱)によれば、深夜帯を含めた24時間介護の対象者要件として「意思疎通を図ることに著しい支障がある者」で、かつ「常時人工呼吸器を使用していること、又は常時頻回の喀痰吸引を必要とすること」を求めており、利用者一人ひとりの事情を踏まえて適切な支給決定を行うものとはなっていません。
そこで、重度訪問介護の支給決定のあり方について、国において実態に関する調査を行うと共に、改めて昼夜を問わず、あるいは医療的ケアの要否など障害特性を問わず、見守り等の支援を行っている時間についても支給量の積算に含めるよう、より踏み込んだ通知を出す等、適切な支給決定がなされるための更なる方策をとってください。
自治体が違法な権利制限をしている事態に対し、国が責任を持って的確な対応をお願いします。
第一一 入通院時ヘルパー利用について
1 入院時ヘルパーの対象者拡大について
訴訟団が長年求めてきたこの論点について
令和6年4月から、区分4・区分5の者にも対象者が拡大しました。
このことは、訴訟団を含む長年の障害者、障害者団体の要求を受け止めて政策改善したものとして、評価致します!
繰り返し要請し続けた甲斐がありました。
質問
その上で、今後に向けて、区分4・区分5への対象拡大後の利用実績や課題についてお知らせください。
また、未だに制度が医療関係者に周知されていないことから、「当院では認めていない」などいう対応を受けたという事例が散見されますので、折角、国による良い制度改善例である以上、医療関係者への周知徹底を更に進めて下さい。
2 通院時の診察室内でのヘルパー利用について
障害のある人が通院し、診察室で医師の診察を受ける際、コミュニケーション支援や代筆、物の受け渡し等の介助が必要となる場面があります。
ところが、「診察室内など、診療報酬が発生する時間帯は重度訪問介護の算定は認められません」などと、診察室内での訪問系サービス(重度訪問介護、同行援護等)の利用が認められない事例があります。
コミュニケーションをはじめとした病院内での支援の必要性は、入院であっても通院であっても変わりません。
通院時の診察室内でのヘルパー利用が可能であることについて、医療関係者等への周知徹底を更に進めてください。
第一二 支給決定における「理由付記」の徹底を
「個々の支援の必要性に即した」支給決定を担保するための手続保障としての理由付記
1 手続違反と人権侵害
そもそも、法の趣旨や裁判例(大阪高裁平成23年12月14日判決[2]等)によれば障害者の個別事情を踏まえて支給量を決めるべきですが、多くの市町村では、市が独自に作った支給決定基準で支給量の事実上の上限を定めるなど、必ずしも個別事情に即した支給決定がなされていません。
個別交渉や訴訟において各当事者が必要な支給量を得ることも重要ですが、それは当事者にとって大きな負担であり、訴訟は時間もかかります。
そのような状況では、行政手続(支給決定基準の作成や、個別事情に即した支給決定に資するものへの改正。理由付記)の適正化を図ることで、全ての障害者に対し、個別事情に即した適切な支給決定プロセスを実現させることが重要といえます。
市町村としても、妥当な支給決定基準の作成や理由付記等、支給決定プロセスの適正化、透明化を図ることで、適正な行政運営ができることにつながると考えられます。
申請者の希望する支給量のうち一部について支給する一部拒否決定につき、現状では多くの市町村が特に拒否理由を支給決定通知書に記載していないが、理由付記が必要となれば、自治体の担当者は、十分に説明できないような理由で(一部)却下決定をすることができなくなるので、当該障害者がどのような支給決定(支給量)を求めており、個別事情を踏まえてどのような決定をすべきか、これまで以上に真摯に検討しなければならないこととなります。
そのことにより、自治体の恣意的な支給決定が抑制され、当事者も理由をみれば不服申立てをするか否かの判断がつきやすくなり、ひいては個別事情に即した適正な支給決定が担保されることにつながります。
支給決定に際しては市町村に一定の裁量がありますが、かかる裁量を適切に統制し、実体的に人権を保障するに足りる支給決定が担保されるようにするためにも、理由付記が果たす役割は大きいといえます。
2 事務処理要領の記載
「介護給付費等に係る支給決定事務等について」[3]第2Ⅶ10⑵イにおいて、支給申請却下通知書の記載事項の例として、「支給申請の内容、申請を却下する旨及びその理由」と示されています。
介護給付費申請書の書式の改善策を提案します。
「一部拒否・一部棄却」が明確になるように、介護給付費申請書の【申請に係る具体的内容】欄に「申請者の希望する支給量(時間数)」欄を加えるべきです。
3 参考裁判例
障害福祉介護給付費の申請に対する一部却下決定につき、理由付記を欠くことが行政手続法8条違反とした裁判例として、福島地裁平成19年9月18日判決[4]があります。
訴訟係属中に法律改正があったため主文は却下ですが、理由中の判断で行政手続法違反とされており、現在の障害者総合支援法の下でも同様に考えられます。
また同旨の裁決例として、山口県知事平成29年4月4日裁決、静岡県知事令和4年3月30日裁決[5]等があります。
4 障害年金の分野における裁判例と国の運用変更
平成23年6月7日最高裁判決[6](民集65巻4号2081頁)は,「いかなる理由に基づ
いてどのような処分基準の適用によって処分が選択されたのかを知ること」を知ることができる程度、具体的な理由を明らかにすることが必要であると判旨しています。
障害年金の不支給処分においては、大阪地裁令和元年4月11日判決[7]は、1型糖尿病で2級の障害基礎年金を受給していた方が支給停止された事案において、支給停止決定に理由の記載がないことが行政手続法に違反するとの判断を示し、そのまま確定しました。
これを機に国は障害年金の不利益処分等に係る理由記載をするように運用を変更しました。https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001112704.pdf 上記PDFの27頁参照。
5 結論
市町村は障害者総合支援法に基づく支給決定において一部却下決定をするときには、必ず処分の具体的な理由が申請者に理解できるような理由を付記すべきことを国は事務処理要領において、明記して下さい。
第一三 食事提供加算と送迎加算について
廃止も検討されていたこの点は、栄養士が献立作成に関わることなど一定の要件を設けた上で「令和9年3月31日まで経過措置を延長する。」とされました。
基本合意3条は「障害者の現在の生活実態やニーズなどに十分配慮した上で、権利条約の批准に向けた障害者の権利に関する議論や、「障害者自立支援法の施行前後における利用者の負担等に係る実態調査結果について」(平成21年11月26日公表)の結果も考慮し、しっかり検討を行い、対応していく。」としています。
引き続き訴訟団として、食事提供加算の継続・拡充を求めます。
また、物価の高騰、長年「経過措置」が継続されている実態等から、制度の恒久化が方向性であると考えます。
第一四 自立支援医療の利用者負担の低所得者無償化
第1回~第15回協議まで一貫して強く要請しています。
この点の毎年毎年紋切型の次の回答は次のものです。
| 厳しい財政状況の中で実現に必要となる多額の恒久的な財源を確保することは困難であり、引き続き重要な課題として検討していく
日本の精神科病院の入院患者は約27万人であり世界で突出しています。
障害者権利委員会は日本に対して、これらの入院患者が退院し、地域で生活出来るように求めています。
現在、低所得世帯の自己負担額については上限額が定められていますが、遅々として進まない精神科入院患者の地域移行を進めるためにも少なくとも低所得者の精神科への通院費用負担を無償化することは不可欠な制度設計と思われます。
この点の実現を真剣に検討してください。
第一五 「恵」問題の示唆する日本の障害福祉行政の課題
第15回定期協議で「恵」問題を取り上げました。
次の事項を求めました。
① 国が責任をもって全国1700人の行き場を確保すること
② 原因を検証し、対策を講じること
① の点は、一括で事業譲渡を受ける会社が現れたと報道されています。
社保審障害者部会令和6年11月14日会議資料で「一括承継について、事業の承継
先として株式会社ビオネストと基本合意書を締結し」等あります。実際は、ビオネストのフランチャイズ企業である「株式会社イノベルヘルスケア」が承継しました。しかし、すべてのグループホームの事業承継はすすんでいないという声が現場から聞こえています。
さらに、恵時代の問題が現場で改善されているのか、中にいる障害のある人の待遇が改善されているのか、心配です。
継続的に国が責任をもって、フォローして頂くようお願いします。
② の点は、曖昧なままという印象です。
令和6年6月26日付の厚労省の発表文書にしても個別事案の対応策に留まります。
社保審障害者部会議事録でも、この問題が浮き彫りにした現在の障害福祉施策の構造的な問題点が議論されていることを見つけることができませんでした。
令和7年6月25日の障害福祉サービス等報酬改定検討チームの資料3のP57のグラフによると、日中サービス支援型グループホームにおける営利企業の参入は、令和5年に発覚した「恵」問題以降も増え続けていることがわかります。
問題発覚の翌年の令和6年3月には、日中サービス支援型グループホーム1,036ヵ所中64.3%の666ヵ所を営利企業が占め、同年12月には同ホームは総数1,242カ所に増勢し、その67.0%の832ヵ所を営利企業が占めるに至っています。
この割合は、もはや就労継続支援A型や放課後等デイサービスにおける営利企業の割合をも上回ってしまいました。
ネットを見れば
「障害福祉グループホームは売上の9割以上が国から入る、営業利益4割の債権回収リスクの少ない安定した事業です。ぜひ開業しましょう」などの障害福祉ビジネス勧誘の広告が多く流れています。
これらの謳い文句につられて参入したり、それらの勧誘を慫慂し、金儲けしか考えず、障害者の人権保障のための施策であることを理解せず、ビジネスしか念頭にない福祉ビジネス業者が跋扈しています。
その犠牲者が障害ある利用者です。
会社方式による障害福祉事業が全部ダメとは言いませんが、障害者自立支援法導入の流れがこのような事態を必然的に引き起こしたと私たちは考えています。
障害福祉事業参入のための条件などの規制を整備することは必須です。
厚労省は、日中サービス支援型グループホームの指定申請にあたっては
①設置自治体の審査の義務付け
②設置自治体の協議会等への事業者による年1回の事業報告の提出
③意見の申出
を制度化してきましたが、
これらは指定審査にまったく影響を与えることができず効果・権限を有していません。具体的には設置自治体が事業者に「設置の不許可」を出しても、指定権者である自治体と事業所の協議で指定申請がすすめられてしまう事実があります。
つまり、
①の設置自治体の審査
②の意見の申出
では営利を第一の目的とした営利企業の参入を規制する効果は全くないのです。
この点、国はどう考えていますか。お答えください。
以上
[1] 令和5年6月30日付「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく自立支援給付と介護保険制度の適用関係等に係る留意事項及び運用の具体例等について」[2] 判例地方自治366号31頁・賃金と社会保障1559号21頁[3] https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001470632.pdf[4] 賃金と社会保障1456号52頁 [5] 賃金と社会保障1857号57頁[6] https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/379/081379_hanrei.pdf[7] https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/691/088691_hanrei.pdf